第１６話　怪鳥現る！の巻　その２

怪鳥は一行を見下ろす位置まで来ると、巨大な羽を広げてゆっくりと羽ばたいたのです。 「何だ！この鳥は・・・！」 　ザリオーが叫びました。 　見上げたシャララたちは、鳥の大きさに息をのんだのです。鳥が左右の翼を広げたその大きさは、人間の身長の何倍もあったのです。 　一同に緊張が走りました。 　怪鳥は静かに羽ばたきながら、崖の細い道に身を寄せて立つ五人の姿を、じっと見下ろしました。 （レピウス様が、心に留めていた娘はあれか・・・？） 　怪鳥はシャララをじっと見つめたのです。 　クレオは静かに剣をぬくと、上空の怪鳥をにらみつけました。 　シャララは怪鳥の視線を感じ、怪鳥の大きな目をじっと見つめました。 「レピウスさんの・・・鳥？」 　怪鳥の目は、静かにシャララを見つめ返していました。 「クレオさん、よして！私たちを傷つける気はないみたい！」 （やはり、この娘がレピウス様の気にしていた娘・・・） 　怪鳥はまたゆっくりと、しかし今度は力強く羽ばたいたのです。 　その羽ばたきによって起きた風が、切り立った崖に立つ一行に強く吹きつけたのです。 「きゃあああー！」 　シャララは、山肌に強く体を押しつけられました。怪鳥はシャララに向かって、急降下してきたのです。 「キィキキキキィー！」 　カシム王子が叫びました。 　怪鳥はその強大な足のつめでシャララの体を一瞬にしてつかむと、シャララをぶら下げて一気に上空へと舞い上がったのです。 「きゃあああああー！助けてぇーーー！」 　シャララの叫び声も、怪鳥と共に青い空へと舞い上がったのです。 「ああっ！」 「シャララさん！」 「キキキキキィー！」 　クレオもザリオーもラムダも、カシム王子も叫びました。突然の出来事に一同はなす術（すべ）もなく、空を見上げたのです。 （この娘、借りて行くぞ・・・） 　その時、ラムダの頭に怪鳥の声がひびいたのです。 「レピウスの鳥・・・！」 　カシム王子、クレオ、ザリオー、ラムダはぼう然として、冷たく澄んだ青い空の中にみるみる小さくなって行く怪鳥とシャララの姿を見つめたのです。 「・・・助けて！助けて！セシン・・・・」 　シャララの叫び声も次第に遠く、怪鳥と共に空の彼方へと消えていったのでした。 「セシン！どうにかしてくれよー！！」 　ザリオーも思わず、助けを求めてその名を口にしたのです。 　カシム王子、クレオ、ラムダも、思わずザリオーの背負う荷物を見つめました。しかし、ランプの入った荷物の中からは、何の応答もありませんでした。 　シャララなしではどんなに強く願っても、ランプの中のセシンを呼び出す事は、一行には出来なかったのでした・・・・。 　　つづく

＜　小説トップへ　＞