| 第２話 フルーツころころ大事件！の巻 その１ | |
| 次の日の朝・・・。 シャララは目覚めると、まず最初に枕元に置いておいてあったランプを手に取りました。 そして金色のランプをそっとなでたのです。 「昨日のことは、夢だったのよね？」 すると・・・。 「夢じゃないよ！今日はシャララさまのお願い事をかなえる日さ。」 ボワン！今度は白いけむりとともに、ランプの中からセシンが現れたのです。 「さあ！これからアルカタブールの市場に行こう。」 王子に会いたいのに市場に行こうなんて、セシンはいったい何を考えているのかしら？シャララはそう思いながらも、急いで朝の身支度を整えたのです。 朝早いアルカタブールの市場には、フルーツのいい匂いがただよっていました。 この市場には、遠い南国から運ばれてきた果物を売る露店があるのです。 「あっち、あっちへ。」 セシンが果物を売っている店のある方向へ行けと、シャララの服をひっぱりました。 セシンは今、親指位の大きさになって、シャララの服の中にかくれているのでした。ランプの精のセシンには不思議な力があって、人間にはとても考えられないような色々な事が出来るようでした。 朝の市場の果物屋には、シャララが今まで見たこともない色とりどりの南国のフルーツがたくさん並べられていました。ここ数年アルカタブールの町は不景気でしたが、この市場の目抜き通りにある店には関係ないようでした。 「おじょうちゃん！どうかね？マンゴー、パパイヤ、何がお好きかな？ 他では手に入らないめずらしい果物が、うちにはいっぱいあるよ！」 フルーツを売る台を威勢（いせい）良くたたきながら、果物屋の主人がシャララに声をかけました。 その言葉にシャララは少しドキドキしました。なぜならどのフルーツも、今のシャララにはとても買えそうもない高そうな物ばかりだったからです。  「えっ？わ、わたしは・・・」 果物はいらないの、そうシャララが言いかけた時、ゴソッ、小さな物音がシャララの目の前の果物の山からしたのです。 「？」 目の前の台には色とりどりのフルーツが、台からこぼれそうな程たくさん並べられています。 その果物の山の中から、その小さな音はしたのです。 シャララがじっと見つめると、果物の山にかくれるように、小さな子ザルが自分の体の半分近くもある大きなマンゴーをかじっているのが見えました。 「？？」 シャララはおどろいて子ザルを見つめました。 果物屋の主人は通りの客に声をかけるのにけん命で、子ザルには気づいていないようでした。 シャララの視線に小ザルも気づいて、不思議そうな顔でシャララをじっと見つめ返しました。 シャララの目には、その子ザルのつぶらな瞳が、とても優し気な表情に見えたのです。 まるで人間のような表情だわ、とシャララは思ったのでした。 その時、果物屋の主人が台の上にいる子ザルに気づきました。 「おっと、なんだ！このサル！商売物を食いやがって！」 果物屋の主人の顔は、怒りのあまり一気に赤く染まりました。 その声におどろいて、サルは果物の並べられた台から飛び下りたのです。 主人はその後を追いかけようとして、大きな体を前へとのりだしました。 その瞬間、果物をのせた台が倒れて、色とりどりのフルーツが道いっぱいに転げだしたのです。  ゴロン、ゴロン、ゴロン。色々とりどりの果物が、道に様々なあざやかな色を塗るように広がっていきます。 「サルめ！どこへ行ったんだ？！」 主人は大声で叫びながら、子ザルを捜して、果物が転がる通りを走り回りました。 「くそ〜！あのサルめ。どこへ行ったんだ？」 果物屋の主人がもう一度大きな声で叫んだ時です。 道にこぼれていたマンゴーにつまずいて、果物屋の主人は勢いよく転んでしまったのです。 その時、シャララの服の中でセシンがそっとささやきました。 「シャララさま、今だ。走るんだ！」 その言葉に、 シャララは一目散にその場から走り出したのです。 つづきへ |