| 第５話 出発！冒険の旅へ・・の巻 その１ | |
| カシム王子一行が出発する日の朝になりました。 アルカタブールの港には、カシム王子の出発のためにアルカタブールで一番新しい船が用意されていました。 真っ青な海に真っ白い帆を張った船が浮かんでいます。船のへさきには人魚の形をした美しい飾りが付いていました。 船の姿は朝の光に輝き、夢のように美しい姿を水面に映し出していました。  港に来たシャララは、その姿を見て思わず叫びました。 「きゃああ〜！キレイな船。この船で出発するのね？」 「この船の名前は、『カシムの輝き号』と言うのです。シャララさん。」 港に立っておだやかな口調でシャララに説明してくれた背の高い青年は、アルカタブール王室の親衛隊の隊長クレオでした。 隊長のクレオ以下、数十名もの親衛隊の兵士が、カシム王子を守る任務のためにこの『カシムの輝き号』に乗り込むのでした。 最初にシャララを捕らえに来た兵士はザリオーという名前でしたが、彼も隊長のクレオと共に『カシムの輝き号』に乗り込むのです。 もちろんあの神秘的な女占い師ラムダも、船には乗り込みます。 「おおっ、思ったよりかイイ感じの船じゃないか？」 船を見ながらシャララに言うセシンに、シャララはおきさきに見つからないように早くランプに入っているように言ったのです。 アルカタブールの港に集まったたくさんの見送りの中には、シャララの父の姿もありました。 「気を付けて行ってくるんだよ、シャララ。」 父はシャララが聞いた事がないようなしんみりとした口調で、シャララに言いました。 シャララがふだん知っている父は頑固な職人で、もっと乱暴な口を聞く男でした。 「大丈夫よ、お父さん。」 シャララは父の言葉に、いつものようにニコッと笑って答えたのです。 「カシム王子の呪いを解いて、ちゃんと帰ってくるから、心配しないで待っていてねー。」 シャララは努めて明るい口調で言ったのです。 「シャララ。これを持っておゆき。」 その時、父はゴソゴソと服の中から何かを取り出したのです。 それは小さな赤い宝石のついた指輪でした。 「これはお前の母さんのために、私が昔作った指輪だよ。 死ぬまでお前の母さんが身に着けていた物だ。これをお守りに持っておゆき。」 元々アルカタブールのアクセサリーは、身を守るお守りの意味もあります。 父は指輪をシャララに手渡しました。 「ありがとう、お父さん。」 シャララは今にも涙がこぼれそうになるのを必死でこらえました。 「カシムちゃん、ホントに行くの？ママは心配だわ〜。ここで待っていた方がいいわ。」 アルカタブールの港では、見送りに来たはずのおきさきがまだカシム王子に向かってグズグズ言っていました。 「キィ〜、キキィ。」 カシム王子はけん命におきさきに何か言っているようでしたが、朝の王子はサルの姿なので、何と言っているのかは誰にも分りませんでした。 たぶん「だいじょうぶですよ、母さま。」とでも言っているのでしょう。 カシムの輝き号は、カシム王子、シャララ、ランプの中にいるセシン、兵士のクレオ、ザリオー、女占い師のラムダ、その他たくさんの兵士や船乗りたちを乗せて、アルカタブールの港からレピウスのいる西の島へと出発したのです。 それは、シャララたちの長い冒険の旅の始まりでした。 つづきへ |