| 第５話 出発！冒険の旅へ・・の巻 その２ | |
| アルカタブールを出てから数日、カシムの輝き号は順調な航海を続けていました。 クレオやザリオーたち親衛隊の兵士やカシムの輝き号の船乗りたちには、帆を張ったり、そうじをしたりと毎日たくさんの仕事があります。 「私も何か、お手伝いできることをしなくっちゃ！」 シャララはそう考えて、食事の準備や甲板そうじを手伝うようにしました。 女占い師のラムダは、毎日船室にこもって占いをしています。 カシムの輝き号がどの海路を通っていくのが一番良いのか、ラムダは毎日占わなくてはいけないのでした。 ランプの精のセシンはと言えば、多くの時間をランプの中で気ままに眠って過ごしていました。 そしてこの旅を始める理由となった、当のカシム王子と言えば・・・。 出発から数日過ぎても、甲板でカシム王子の姿を見かけることはありませんでした。 カシム王子は出発の日から船酔いが酷く、自分の船室にずっとこもってしまっているのでした。昼の子ザルの姿の時も、夜の人間の姿の時も、王子は自分の船室から出てこないのでした。 ある夜のことです。 海面を渡る風は静かで、波もとてもおだやかな夜でした。 夜空には数え切れない程のたくさんの星々が輝いています。 そんな静かな夜、シャララは一人、甲板の手すりにつかまって星をながめていました。 「海の上で見る星って、キレイ〜」 そんなつぶやきがシャララの口から思わずこぼれた時、船室の方からフラフラと出てくる人影があったのです。 「あれれ？カシム王子？」 「シャララさん？」 人影はカシム王子だったのです。  「カシム王子、船酔いはもうだいじょうぶ？」「ありがとうございます。だいぶ落ちついてきました」 「そう？良かったね」 海を渡る風が、甲板に並んで立つ二人に心地良く吹いています。 「シャララさんは、いつも元気なんですね。 クレオが甲板そうじを良く手伝ってくれてると言ってましたよ」 「えへへ、だってそんなこと位しか、お手伝いできることないし・・」 シャララは明るい笑顔で王子に答えました。 「みんながボクにかけられた呪いを解くために、がんばってくれてる時に、ボクは何にもできなくて・・」 「え？だって、それは仕方ないでしょ？王子は船酔いで具合が悪かったんだし。それにこれからカシム王子にしかできない仕事だって出てくると思うわ、きっと」 二人の頭上には、ダイヤモンドをちりばめたように満天の星がキラキラと輝いていました。 「カシム王子、私、聞きたいことがあったの」 「何ですか？シャララさん。」 「カシム王子は、何でサルちゃんの姿の時、あの市場に来たの？」 「ああ、あれですか？初めてシャララさんに会った時ですね。 あれはラムダの占いで、朝、王宮の東に行けば、ボクの呪いを解くために力になってくれる人に会えると聞いたからです。 だからサルの姿で朝、王宮をぬけ出したんです。 あの市場は王宮の東にあって、とてもにぎわっている場所ですからね」 「そうだったの」 シャララは、子ザルの姿のカシム王子を思い出して、くすっと笑いました。 「カシム王子は、マンゴーがとっても好きなのね！」 「すみません。あの時はとってものどがかわいてしまっていたので、ついあのマンゴーを食べてしまったのです。王宮の外では、お金がいることを知らなかったのです」 その言葉にシャララは目を丸くしました。 「カシム王子は今まで一度もお金を使ったことがなかったの？ でもカシム様は、アルカタブールの王子様ですものね！私達の生活とはちがうのよね」 「あの果物屋には、後で王宮からちゃんとお金を持っていかせました。 本当にあの時は、助けて下さってありがとうございました。シャララさん」 空には大小の星々がキラキラと輝いています。 静かな時間が、二人の上に流れていました。 「あ！流れ星！」 「本当ですね！」 「今、カシム王子の呪いが解けるように、流れ星にお祈りしたよー」 「ありがとう、シャララさん」 カシム王子は明るい表情で、シャララに言ったのでした。 その頃、船の一室では女占い師ラムダが暗い顔で、占いに使う水晶玉を見つめていました。 ラムダの水晶球の中には、何か分らない黒い影が浮かび上がっていたのです。 その影が何か、必死に見つめていてもラムダにも分りませんでした。 ラムダは不安気につぶやいたのです。 「何かが近づいて来るわ、このカシムの輝き号に・・・。 何か・・・あやしい黒い影が・・・」 カシムの輝き号に、近づく黒い影とは一体何なのでしょうか。 満天の星の夜、カシムの輝き号に不吉な影が刻々と近づいてきていたのです・・・。 つづきへ |