| 第６話 大嵐！の巻 その１ | |
| その日の朝も、空は青く晴れ渡っていました。 しかし太陽が昇っていくにつれ、海の上を吹く風の流れが急速に変わってきたのでした。 その様子に船乗り達がさわぎ出したのです。 「どうしたの？」 不思議に思ったシャララは、甲板にいたクレオにたずねてみたのです。 「こんな風の変わり方は、珍しいのだそうです。嵐の来る前ぶれかもしれないと、船乗りたちはさわいでいるのですよ」 その頃船室では、女占い師のラムダが昨夜と同じように水晶玉を見つめていました。 ラムダの目の前に置かれた水晶玉の中には、不吉な影が映っていたのです。 「ああ、何かがこの船にものすごいスピードで近づいてくるわ・・」 しかし水晶玉をじっと目をこらして見つめてみても、中に映る影の正体はラムダにも分らなかったのでした。 空はどんよりとした暗い色になっていました。 その時、うなり声のような音が、突然海の上をひびいてきたのです。 「何だ！？あの声は・・・」 勇かんな船乗りたちの顔にも、動揺（どうよう）の色が浮かびました。 「まさか・・・アルジヴァ！？」 船乗りたちは、口々につぶやき出したのです。 「アルジヴァって、なぁに？」 シャララは、クレオにまたたずねてみました。 「私も書物で読んだ事があるだけなのですが、伝説の海の怪物の事ですよ。アルカタブールの船乗りたちに伝わる伝説なのです。 アルジヴァとは、嵐の前に現れるという海の怪獣のｊことなのです」 「怪獣〜？！」 シャララは驚きの声に、クレオは言葉を続けたのです。 「いや、まさか、そんなはずはないのですが・・・」 しかし、またほえ声のような大きな音が、海の上にとどろいたのです。 海を見つめていた船乗りの何人かが、水平線の彼方を指さして叫び出しました。 暗い空と暗い海の間に、何かが動いているのが見えたのです。しかしその姿はあまりに遠くて小さく、はっきりとはしませんでした。 水平線の彼方に見えるのは、本当に伝説の海の怪物の影なのでしょうか。 シャララも海の彼方を見つめました。 「キキィ〜」 甲板に出てきたカシム王子も、心配そうな声を出しました。 その時、突然辺りは真っ暗になり、本物の雷鳴がとどろきました。 そして厚くて暗い雲が、カシムの輝き号をすっぽりとおおってしまったでした。 突然恐ろしい勢いの雨と風が、船におそいかかりました。 「きゃああ〜！」 はげしい船のゆれと、吹きつける雨風の強さに、シャララは叫びました。 カシムの輝き号は、嵐のまっただ中に突然入ってしまったのです。 「嵐用の帆をしっかり張るんだ！」 クレオが叫びましたが、船乗りたちはなかなか動き出しません。先ほど見た怪獣のような影に、船乗り達もパニック状態のままだったのでした。 大嵐の海では、さしものカシムの輝き号も、波にもまれる小さな葉っぱと変わらない存在でした。  その時、耳をつんざくような大きな音とともに、強い光が船をおそったのです。雷がカシムの輝き号のメインマストの上に落ちたのでした。そして、船のマストの一部がこわれてしまったのでした。 こわれかけたマストの横ゲタの部分には、帆がからんでしまっています。 「ダメだ。帆を直さないと・・・」 マストを見上げたクレオが、マストをよじ登ろうとし始めました。 それを見た年配の船乗りが、クレオを止めました。 「ダメだ・・、おまえさんじゃ。 見ろ、あのマストのずっと上の方を。 ほんの少しだが、ひびが入っている。 おまえさんの体重じゃ、あそこまでいったら折れてしまう・・・」 「それでは、一体どうすれば・・・？」 クレオはうなりました。 その側でカシム王子が心配そうに「キキィ〜・・」と小さく声をあげました。 「待ってて、クレオさん！」 シャララは叫んで、走り出したのです。 「えっ？！シャララさん？」 「キキィ〜！」 甲板に強い風が吹きつける中、シャララは下の船室へ続く階段までどうにかたどりつきました。 そして階段を一気に駆け下りると、船室へと走りこんだのです。そこには金色のランプが置いてあります。 「セシン、お願いよ！早く出てきて！」 ランプをこすりながら、シャララは叫びました。 「オイラをお呼びかい？シャララさま」 「あ〜、セシン！良かった！お願いよ、この船を守ってちょうだい。大嵐なのよ！」 「そうみたいだなぁ。雷の音までしてらぁ・・。しかし、こいつは・・・」 「お願いよ！セシン！マストの一部もこわれてしまったの」 「ん〜、そいつは、２度目のお願い事か。いいのかい、こんな時に大事なお願い事を使っちゃって・・？」 「何言ってるの！あたり前でしょ。みんなの命がかかってるのよ。 セシンは、いつもそんな事ばっかり・・。早く助けてくれないなら、私行くわね！」 シャララはセシンに叫ぶと、再び甲板へとかけ上がったのです。 「シャララさまっ？！」 つづきへ |