第１5話　輝く浜の罠（わな）！の巻（下)　その１

「ラムダさん！」 　クレオが叫び、とっさに手を差しのべて、ラムダの手をにぎって上に引きずり上げようとしました。しかし、クレオが力を入れてラムダを助け出そうとしても、ラムダの体はズルズルと宝石の中へとうもれていくのでした。 「隊長！」 「ラムダさん！」 「キィキキィ〜！」 　ザリオーやシャララ、サルの姿のカシム王子も、クレオに手を貸そうと二人の周りに集まり、けん命にラムダを救い出そうとしたのでした。 　しかし今度はラムダがしがみついたクレオの体まで、少しずつ宝石の中へと沈んでいったのです。 「セシン！お願い！ラムダさんたちを助けてー！」 　必死でラムダとクレオを助け出そうとしながら、シャララは叫んだのです。 　その時、じっとラムダを見ていたセシンが叫んだのです。 「石を・・・ラムダ！宝石を持っているだろ？それを早く捨てろ！」 「ええっ？」 　シャララは思わず叫んで、ラムダの顔を見たのです。ラムダは恐怖のあまり、こわばった顔をしています。すでにラムダの肩から下は、宝石の浜辺にうまってしまっていたのです。 「わ、わかったわ・・・」 ラムダは宝石の中にうまっている体を、必死で動かしているようでした。 「う、うまくいかないわ・・・」 「おれが手伝う・・・」 　クレオが宝石の中で体を動かし、ラムダが動きやすいように手を貸したのです。クレオのおかげで、ようやくラムダは宝石の中で手を動かせたようでした。 「す・・・捨てたわ」 　しぼり出すような声で、ラムダは言ったのです。 「あ・・・ああっ！」 　しかし、またラムダは悲鳴を上げたのです。ラムダとクレオの体は、それでもまだズブズブと宝石の中へと沈みこんでいったのでした。 「どうやらこの浜辺は、宝石を盗もうとした者を決して許さないみたいだぜ」 　苦々しい表情で、セシンが言いました。 「おい！セシン。何とかなんねぇのかよ！」 　必死でクレオとラムダを引きずり上げようとしながら、ザリオーが叫びました。ラムダもクレオも、すでに顔の部分まで宝石にうずまりかけていたのです。 「お願いっ！セシン。早く！早く！ラムダさんとクレオさんを助けて！このままじゃ、二人とも息が出来なくなってしまうわ！」 　そう叫びながら、シャララはラムダとクレオの顔の周りの宝石を、両手で必死にかき出したのです。ザリオーも両手で宝石をかきわけ、クレオとラムダを宝石の中から引きずり出そうとしました。しかし、そのシャララとザリオーまで宝石に足をとられ、宝石のアリジゴクに沈み始めたのです。 「・・・はなれろ！」 　クレオが叫びました。 「ダメ！ラムダさんとクレオさんの息が出来なくなってしまうわ！」 　ラムダの顔の周りの宝石を必死でかけわけながら、シャララは叫びました。 　シャララの足も、すでにくるぶしまで宝石の中に沈みかけていました。 「・・・セシン！私のお願い事は、まだあるはずよ！」 「わかってるって！」 　セシンは右腕を天に向かって高くかかげ、呪文を唱えだしていたのです。 「πωψΣζ・・・κφψ」 　宝石の浜辺の上を、風がザァ・・・・と吹いていくのが、皆に感じられました。 「ωΣβζλθχ・・・・ωΣβζλθχ！！」 　シャララが聞いた事もないような言葉を、セシンが強く発すると同時に、ラムダたちがうずまっていた宝石が、ザザザザァザァ・・・・と波がひいていくように、外へと円を描きながら、はなれていったのです。 　　つづく

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